特殊印刷

公開日:2026.1.10

ニス引き・型抜き済み板紙への「後加工箔押し」技術の全貌

0. 概要

「印刷・表面加工済みのパッケージに、後から箔押しを追加したい」というニーズに対し、多くの印刷会社が直面する「定着不良」と「給紙トラブル」の壁。本記事では、業界内でも難易度が高いとされる「ニス引き面への箔押し」および「トムソン(型抜き)済み変形板紙(ボード紙)への自動給紙」について、その技術的メカニズムと解決策を徹底解説します。ハイデルベルクGTPの40t加圧と職人の調整技術が、いかにして「不可能」を「可能」にするのか。リブランディングや在庫活用を検討する企業の担当者必読の技術レポートです。

1. 導入部:その「箔押し」は、もう手遅れなのか?

「お菓子のパッケージ在庫が大量にあるのですが、ロゴを変更したいのです」 「すでに箱の形に抜かれているのですが、ここに金箔で『新発売』と入れたいのです」

私たちのもとには、こうした切実なご相談が頻繁に寄せられます。 共通しているのは、クライアント様の焦りと、前段で相談した印刷会社からの「No」という回答です。

通常、印刷業界の常識として、箔押しは「表面加工の前」あるいは「断裁・型抜きの前」に行うのがセオリーです。工程がすべて終わってしまった「完成品(展開図)」に対して、後から加工を加えること(追い刷り)は、極めてリスクが高いとされています。

「ニスの上からでは箔が乗らない」 「形が不揃いだから機械に通せない」 「手差しで一枚ずつやるならコストが合わない」

他社で断られた理由は、概ねこのようなものでしょう。しかし、ビジネスの現場では「待ったなし」の状況が生まれます。数千、数万枚の資材を廃棄するわけにはいきません。

結論から申し上げましょう。その箔押しは、まだ間に合います。 決して「手遅れ」ではありません。適切な設備と、素材の特性を見極める「眼」があれば、ニス引き面であっても、型抜き済みであっても、美しく強固な箔押し加工は可能です。

2. 問題の背景:なぜ「ニス引き・型抜き後」は断られるのか?

なぜ多くの業者がこの加工を敬遠するのか。そこには明確な技術的・物理的な障壁が存在します。現場の視点で、そのメカニズムを解き明かしてみましょう。

2-1. 「滑る」表面加工の壁

まず最大の壁が「ニス」や「PP(ポリプロピレン)」などの表面加工です。これらは印刷面を保護し、光沢を与えるために施されますが、箔押しにとっては「天敵」とも言える存在です。

箔押し(ホットスタンプ)は、熱によってフィルム裏面の接着剤(ホットメルト層)を溶かし、紙の繊維に食いつかせる(アンカー効果)ことで定着します。しかし、ニスやPPの皮膜は紙の繊維をコーティングして平滑にしてしまうため、接着剤が入り込む隙間がありません。 その結果、単にツルツルした氷の上にシールを置いたような状態になり、爪で軽く引っ掻いただけでポロポロと剥がれてしまう「密着不良」を引き起こします。また、表面が滑りやすいため、プレスした瞬間にミクロン単位で箔がズレてしまい、文字の輪郭が汚くなる「バリ」の原因にもなります。

2-2. 「掴めない」変形用紙の壁

もう一つの壁が、用紙の形状です。 通常、オフセット印刷機やシリンダー式の加工機は、紙の端(咥え代)を爪(グリッパー)で掴んで、高速でドラムに巻き付けながら搬送します。 しかし、すでにトムソン加工(型抜き)が施された用紙は、パッケージの展開図のような複雑な形状をしています。搬送に必要な「直角の角」や「掴むための余白」が切り落とされているのです。

これを無理に機械に通そうとすれば、途中で紙が回転してしまったり、機械内部で詰まって(ジャムって)しまったりする大事故に繋がります。 そのため、多くの現場では「安全策」として、人の手で一枚一枚機械にセットする「手差し」を選択せざるを得ません。しかし、手差し作業は生産性が低く、3,000枚〜10,000枚といった商業ロットを短納期で処理することは現実的に不可能なのです。

3. 解決策:ハイデルベルクGTPと「4つの調整力」による突破口

フジイ印刷では、これらの課題に対し、ドイツ製プラテン機「ハイデルベルクGTP」と、創業以来培ってきた特殊印刷の知見を掛け合わせることで、安定した加工フローを確立しています。

3-1. 表面加工を突破する「40tの加圧」と「専用箔」

滑りやすいニス面に対し、私たちは「物理的な力」と「化学的な相性」の両面からアプローチします。

  • 最大40tの印圧(Pressure): ハイデルベルクGTPは、面で押す「プラテン方式」を採用しており、最大40tもの強力な圧力をかけることが可能です。このパワーを活かし、ニスの皮膜の上から、下の板紙の繊維ごと圧縮するようなイメージで「焼き付け」を行います。

  • 専用接着剤の選定(Material): 箔には数え切れないほどの種類があります。私たちは、紙用・プラ用といった大枠だけでなく、ニスの成分(油性、水性、UVなど)との相性を考慮し、最も食いつきの良い「専用の接着剤」を持つ箔を厳選します。

この「強力なプレス」と「最適な接着剤」の組み合わせにより、爪でこすっても剥がれない、強固な定着を実現します。

3-2. 不定形を制する「自動給紙」技術

そして、フジイ印刷の最大の強みが「変形板紙の自動給紙」です。 ハイデルベルクGTPの給紙機構は、サクション(吸着盤)で紙を持ち上げ、スライドさせてプラテン(圧盤)へと送り込みます。この機構は、回転体に巻き付ける方式に比べて、紙の形状に対する許容度が非常に高いという特徴があります。

私たちの職人は、トムソン加工済みの複雑な形状に合わせて、サクションの位置、エアの強さ、ガイドレールの角度を緻密に調整します。これにより、あたかも長方形の紙であるかのように、変形板紙をスムーズに自動搬送させることができるのです。 この技術により、手差しでは数日かかる3,000枚クラスの案件でも、実働半日程度で加工を完了させることができます。

3-3. 職人による高精度なバランシング

もちろん、ただ機械を回せば良いわけではありません。 ニス引き面への箔押しは、温度が高すぎればニスが溶けて汚れになり、低すぎれば接着しません。また、版が紙から離れるスピード(剥離速度)が適切でないと、バリが発生します。

  • 温度(Temperature)

  • 圧力(Pressure)

  • 速度(Speed)

  • 材料(Material)

この4つの変数を、その日の気温や湿気、紙の状態に合わせて、職人が高精度にチューニングします。「常に創造的な仕事をする」という私たちの理念は、こうした一見地味な調整作業の中にこそ息づいています。マニュアル通りの設定ではなく、目の前の「困った」を解決するための最適解を、その都度創造しているのです。

4. 信頼の証拠:実績が証明する「駆け込み寺」としての実力

ここで一つの事例をご紹介します。 あるお菓子メーカー様から、「トムソン加工済みの厚物板紙(350g/m2クラスのボード紙)に、黒の箔押しを追加したい」というご依頼をいただきました。すでにオフセット印刷とニス引きが施されており、他社では「定着しない」「機械に通らない」と断られた案件です。

私たちはまず、予備紙をお預かりしてテスト加工を行いました。通常の黒箔では定着が弱かったため、表面加工紙に対応した特殊な顔料箔を選定。さらに、厚紙の剛性に負けないよう40t近い圧力をかけ、同時にGTPの給紙ガイドを製品形状に合わせて改造に近いレベルで調整しました。

結果、3,000枚強の製品に対し、浮きや剥がれのない完璧な箔押しを実現。位置合わせ(見当)においても、既存の印刷デザインに対して高い精度でフィットさせることができました。 クライアント様からは「廃棄処分を覚悟していたが、本当に助かった」と、大変な喜びの声をいただきました。

フジイ印刷は、1967年の創業以来、活版印刷と特殊加工の領域で技術を磨き続けてきました。保有するハイデルベルクGTP、T型といった名機は、単なる古い機械ではなく、現代の難題を解決するための現役の武器です。 「謙虚にして驕らず」、しかし技術には絶対の自信を持って、お客様の課題に向き合っています。

5. その課題、まずは「テスト加工」で検証を

「他社で断られたから」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。 ニス引き面への定着テストや、変形用紙の通紙テストなど、実物を用いた検証からサポートいたします。

在庫のリブランディング、輸入パッケージのローカライズ、印刷ミスのリカバリー。 「後加工」という選択肢が、御社のビジネスのピンチをチャンスに変えるかもしれません。

▼ お問い合わせ・加工テストのご依頼はこちら (ここにWebサイトの問い合わせフォームURLを表示) https://www.fujii-print.com/contact/

▼ 関連技術:箔押し加工の詳細スペック https://www.fujii-print.com/product/detail/hoil-stamping

▼ フジイ印刷株式会社 会社案内 https://www.fujii-print.com/about

この記事の監修者

藤井 聡|代表取締役

業務印刷の未来を探求し、中小製造業向けのALL IN ONEクラウドERPやAIO向けLP制作ツールをリリース。2019年に社内の事務職ゼロを達成し、クラウド実践大賞岡山大会で発表。京セラの稲盛和夫氏とゲーム作家の米光一成氏の考え方を取り入れた会社の仕組みづくりを推進中。

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